豊かな森林資源に恵まれた岩手を、日本一の国産材供給基地へ

けせんプレカット事業協同組合

専務理事 泉田十太郎さん
通訳・総務部兼アメーバ経営管理部サブリーダー 温 秀輝さん(气仙木业(大连)有限公司)

岩手県住田町に本社と住田工場を、陸前高田市に高田工場を構える「けせんプレカット事業協同組合」は、80社を超える林業関係者、建設業者、工務店で構成される組合。資材の調達から加工、建築にいたるすべての工程を一貫して行う独自の「けせん式・林業循環システム」で、気仙地方はもとより、岩手県全体の林業振興を目指しています。

お話を伺った人

泉田十太郎さん
住田町生まれ。
「けせんプレカット事業協同組合」専務理事、「けせんホーム」代表取締役。
温 秀輝さん
平成21年入社。中国からの技能研修生の受け入れ窓口を務める。
平成25年より、けせんプレカットが100%出資して設立された子会社「气仙木业」(中国大連市)の責任者も兼務。

聞き手

西尾由香利
サンポット株式会社 技術部開発課所属。
ペレットストーブの開発リーダーを務める。

「川上」から「川下」まで、よどみのない林業循環システムを構築

けせんプレカット事業協同組合は、森林を育成・保全する林業関係者、木材を建材として加工する製材工場・集成材工場・プレカット工場、その材を使い建物を建てる工務店など、林業の「川上」から「川下」まで携わる82の団体の出資により平成5年に設立されました。
泉田:当組合が設立された平成5年頃というのは、戦後の拡大造林により整備された森の木が、市場に出せるくらいに成長したあたりでした。しかし当時、外国産の建材に押され、国内林業は厳しい状況に置かれていました。もともとはそんな状況を解決するために、当組合は設立されました。
そこで見えてきたのが、森林所有者に始まる「川上」から、家を建てる施主にいたる「川下」への流通体制の途中で発生している「よどみ」だったと泉田専務理事は話します。
泉田:川上にある森林所有者や森林組合がいくら良い木を育てても、それをハウスメーカーや工務店に建材として供給する「建材加工」が間に合っていない状況でした。そこによどみが生まれるから、国内林業がうまく回っていかないのです。仕入れた材を建材としてどんどんハウスメーカーに回す、それが当社の役割だと思いました。
本社、気仙工場の全景。周囲は、住田の豊かな森に囲まれていました
これまでは建築現場で職人の手により加工していた建材を、あらかじめ工場で加工すること(プレカット)で、そこにかかる労力や時間を短縮。最新のCAD(パソコン上で図面を作成するためのソフトウエア)やCAM(パソコン上で加工プログラムを作成するソフトウエア)の導入、また加工のオートメーション化により、強固で精度の高い建材を大量に生産できる体制を、けせんプレカットは推し進めてきました。
泉田:取引先は、大東建託、三井ホーム、住友林業などの大手メーカー。部材を大量に供給できる体制を整えることで、その需要は増えていきました。需要が増えるということは、育てた木がよどみなく有効に使われるということ。「生産量」と「使う(売れる)量」のバランスがとれることで、林業はうまく循環していきます。
設立当初は気仙管内の木材使用量を増やしていくことを目的にしていましたが、今はそこにとどまりません。仲間内での合言葉は、「宮古、遠野、気仙が連携し、日本一の国産材の供給基地をつくろう」。国内、そして海外の市場を見据え、岩手県全体の林業振興に寄与していけたらと考えています。
資材調達から建材加工、建築まで一連の流れを組合が担うことで、コストの削減や情報の共有化も実現。建材としての「岩手の木」の価値を高める一翼を、けせんプレカットは担っています。
(写真上)泉田専務は住田町出身。かつては多くの同級生が、大工など木材に関わる職人になったと話します
(写真下)中国出身の温さんが入社したことで、中国からの技能研修生の受け入れがスタート。その後、子会社「气仙木业」の設立へとつながっていきます

市場は国内にとどまらず海外へも

けせんプレカットは、平成25年、中国大連市に100%出資の子会社「气仙木业」を設立。現地で、CAD入力や化粧材・羽柄材の製造などを行っています。その伏線となったのが、平成21年からスタートした中国からの技能研修生の受け入れ。研修生受け入れの窓口となったのが、中国出身の温さんでした。
温:現在けせんプレカットでは、約40名の研修生を受け入れています。20代〜30代の若い世代が、コンピュータのオペレーションから木材加工、建築の現場まで、あらゆるセクションで働きながら技術を学んでいます。
泉田:私が中学を卒業するときには、クラスの半数以上が大工などの職人になったものですが、今は林業関係に進む人が本当に少なくなりました。国内に人材がいないのだから、海外に求めるのは自然な流れです。
とはいえ、けせんプレカットは単純な「労働力」として研修生を受け入れているわけではありません。
泉田:中国は「ものを安くつくる場所」ではなく、「市場」として魅力的な場所なんです。人口が多く、所得レベルもどんどん上がっている。現在大手メーカーと共同して、住田の木を使った農家向けの木造住宅の販売をスタートしたところです。
温:中国の「气仙木业」で働くのは、すべてけせんプレカットで働いた経験を持つスタッフ。ここで経験を積み技術を習得しているので、技術的にも勤務態度にしても信頼のおけるスタッフばかりです。けせんプレカットのノウハウをそのまま中国で再現できるのは、「气仙木业」の強みであり、けせんプレカットの海外進出の大きな足がかりになっていると思います。
住田工場での加工の様子。住田工場では、2×4工法で使用する壁パネルの製造や集成材の製造・加工などが行われています

新たな技術導入、環境貢献にも積極的に取り組んでいます

これまでも、多くの先進技術を取り入れ成長してきたけせんプレカット。その視線は未来を見据えています。
泉田:近々導入を予定しているのが、次世代技術といわれているCLT(Cross Laminated Timber・直行集成材)です。RC造に匹敵する強度を誇る木質集成材で、海外では中高層の建物にもすでに使われています。
現在国を挙げて「コンクリートから木へ」と国産材の利用促進が進められている中、中高層の建物に利用できる集成材の需要は増えていくものと見込まれます。木材の大量需要につながる技術であり、けせんプレカットでもCLTの製造工場を新設する予定です。
同時に、自然を相手にする仕事の責務として、環境問題にも積極的に取り組んでいます。
泉田:平成15年には、住田工場でペレット工場が稼働。木質バイオマスエネルギーの利用に着手しました。さらに今プロジェクトを開始しようとしているのが、間伐などの際に出るバーク(木の皮)を使った発電と、その余剰電力を使った水素エネルギーの製造です。
バーク発電によって電力を得ることはもちろん、夜間にその電力を使って、水から電気分解により水素を取り出し、その水素を構内で使う運搬機械などの燃料として利用しようと考えています。化石燃料を一切使わず、バイオマスエネルギーでのみ水素を製造する、東北では初となる実験的なプロジェクトです。
もともと我々の仕事は、国内でとれた材を住宅として使用することで、都市部に二酸化炭素をできるだけ長く固定するという面で環境に貢献しています。また国産材の需要が増えれば、その利益は森林の保全に回され、より豊かな森へと循環していきます。幸運なことに我々の仕事は、企業として成長すればするだけ、地球環境に貢献できるものです。エネルギーへの取り組みも、自然からの恩恵を享受している企業として、取り組まねばならない課題だと考えています。
住田工場では、工場内で出る短材や端材を活用し、高品質なホワイトペレットを製造しています。ペレット工場が稼働したのは、サンポットがペレットストーブの製造を始めたのと同じ平成15年。現在ペレットストーブの開発リーダーを務める西尾の顔も自然にほころびます
取材を終えて
サンポットのペレットストーブは、2003年(平成15年)の発売当初より、住田町役場庁舎をはじめとした各施設、個人宅様など町内各所に多くご採用頂き、皆様に長くご愛顧頂いております。けせんプレカット事業協同組合さんとも当時からお付き合いをさせて頂いております。 海外からの技能実習生の方々が多い事に驚きましたが、皆さん写真撮影などにも快く応じてくださり、職場の活気や一体感が感じられた取材でした。また、手際の良い作業も見学させて頂きました。 住田町周辺を主とした岩手県の豊富な森林資源が、建材に形を変えて全国へ。また今後は海外へ。森林と生態系を守る循環の中間を担う事業で、地球環境に貢献していることを、誇らしく思います。