森で眠り、森で夢見る。ひとりでも多くのひとに、森で自分に目覚めてほしい。

夢見の森

オーナー 髙橋眞由美さん

お話を伺った人

髙橋眞由美さん
1959年花巻市生まれ。
20余年の香港生活にピリオドを打ち北海道に移住。7ヘクタールの夢見の森を整備しながら、道産カラマツ材で建てたパッシブソーラーハウスで暮らす。

聞き手

西尾由香利
サンポット株式会社 技術部開発課所属。
ペレットストーブの開発リーダーを務める。
夢見の森から見える洞爺湖とパッシブソーラーハウス。

夢見の森でみる夢は、本当の自分からのメッセージ

夢見の森と名付けた7haのカラマツ、トドマツの人工林。髙橋さんはこの森で、〈「夢見の森」に目覚める森林再生プロジェクト〉を立ち上げ活動しています。
髙橋:夢見の森は映画『しあわせのパン』で一躍有名になった洞爺湖町月浦にあります。わたしが取得するまで四半世紀に渡って人の手が入らず荒廃を極めていました。1977年までは畑でしたが有珠山噴火に伴い40センチもの火山灰に覆われ、地主さんである農家さんは耕作を放棄、助成金も受け取らず、お爺ちゃんが趣味でカラマツを植林したそうです。2012年にこの土地を取得し、森の手入れをしながら暮らしていこうと決めました。
写真右は夢見の森山頂。来年までに遊歩道を完成させ休憩所をつくる予定。
ひとりでも多くの人に自分に目覚める体験をしてもらいたい、夢見の森にはそんな想いがこめられています。
髙橋:夢見の森という名前はすぐに決まりました。当時傾倒していた心理学者アーノルド・ミンデルの提唱した「dream body(ドリームボディ、夢の身体)」という概念から来ています。私たちが本来の自分を生きていない時に夢を通じてメッセージを受け取るというようなもの。これからは、この森で見る夢を人生の指標にしていこうと思いました。ひとりで見る夢もいいのですが、せっかくならみんなで見たら楽しいな、と。この森で眠り、朝日を浴びながら、森に見せられた・魅せられた夢を語り合りあったら素敵だなと思ったんです。
樹木医の鈴木さん、大西林業の大西社長と出会い、3人でプロジェクトを発足しました。
髙橋:お化け林と化していたこの森林、下の道を挟んだ1500坪に関しては、2012年2月から2年間にわたり、1人で整備に努めてきました。2012年4月には、道産カラマツ材にこだわる工務店さんに依頼し、太陽熱を利用したソーラーハウスを建て快適に暮らしています。
そんな時、豊浦町在住の樹木医で木育マイスターの鈴木隆さんと大西林業(白老町)の社長、大西潤二さんと出会い、夢見の森に目覚める森林再生プロジェクトを立ち上げることになりました。3人いれば任意団体と認定され交付金が申請できるというのです。
林野庁の交付金を申請し、森林組合に頼らない自伐林業の道を選びました。
農家は農作物を売って収益を得られるのに、林家は切れば切るほど損をしてしまいます。森林の手入れは個人では難しく、外部に頼めばお金がかかります。また、切り出した材木は国内ではなかなか売れません。住宅のほとんどは外材を使用しているのが現状です。
幸いにして林野庁の森林・山村多面的機能発揮対策交付金に申請が通り、2016年度までの3年間交付金を受けながら、まずは自分たちで森の手入れをしようということになりました。
自然な森の姿を取り戻し、豊かな生態系にするんだという気持ちがあります。
髙橋:林業に関しては全くの素人ですので樹木医・木育マイスターの鈴木隆さんがリーダーです。彼の計画のもと植林されたカラマツを間伐して森にお日様を入れていきます。こうすると広葉樹が自然に生えていきますから、上手に育てて広葉樹の森を目指します。植林はせずに、カラマツの人工林を半分程切って、薪やクラフト等に活用しながら自然な森の姿を取り戻してゆきたいです。そのためには、まずは作業道の確保が必要で、そこに敷く路盤材をどうしようかという話になりました。
樹木医の鈴木隆さんが森作りのリーダー。森づくりの頼れる仲間達。写真左より、樹木医・木育マイスター 鈴木隆さん、山形より移住 森林ボランティア 松浦進介さん
夢見の森の白い作業道はホタテの貝殻が敷き詰められています。
髙橋:『夢見の森』の作業道は、ホタテの貝殻を路盤材として用いています。浸透性に優れこの雨で各地で土砂災害警戒が叫ばれる中、当地は全く問題ありません。普通、路盤材に用いられる砂利や砕石は、コストもかさむ他、地元でも石切に対する周辺住民の苦情が募っていて環境問題に発展しているそうです。産業廃棄物に目を向けると、鉄鋼スラグはクロムの流出問題、木材チップはコスト髙という問題があり難しい。しかしホタテは1立方メートルあたり2500円と安価で安全。業者が頭を悩ませる廃棄物問題に活路を見出す方法として画期的ではないでしょうか。また、「森は海の恋人」と言われるように、森は水源を涵養しています。海に滋養を注ぎ魚介類を育てます。ホタテの道は、森と海の絆の象徴でもあるでしょう。嫌われ者の貝殻が再び命を得る、見捨てられた人工林が再び命を得る、それが「夢見の森」なんです。
ホタテの貝殻が敷き詰められた作業道。
森づくりを通して自分に目覚める傍で、いずれは経済活動につなげていきたい。
髙橋:夢見の森では一緒に活動してくれる仲間を随時募集しています。林業技術に長けた人だけでなく様々な関わり方を歓迎していますし、会費は無料です。
今までの主な活動は、間伐材でつくる薪づくり、クリスマスツリーを学校に提供、アースオーブンづくり、ティピー(アメリカ先住民の住居)づくり、福島の子ども達のサマーキャンプ、トドマツの葉の精油づくりなど子どもと一緒に大人も楽しめる体験プログラムを実施してきました。また、こうした活動には地元の森林ボランティアの皆さんの協力が欠かせません。彼らに活動の場を提供できることも喜びですし、今度も森の恵みを生かした活動を開催し、広く社会に貢献することを目指します。
アースオーブンで焼く天然酵母のパン。

交付金が終了した後、森を資源化するコレ!という具体案は未だ見えていません。しかし、ここは「夢見の森」ですから、あまり心配していません。当面の目標は、山頂までの遊歩道を開通させること。ここに休憩所(いずれはツリーハウスを建てられたら最た髙!)を設ける予定です。今この瞬間を大切にすることで明日が見えてきます。夢見の森で暮らしながら、自分に目覚めていく過程を楽しみたいと思います。

取材を終えて
夢見の森はカラマツの人工林がほとんどとのことですが、山の頂上付近には自然林があり(ミズナラやイタヤカエデなど、だそうです)、足元には大きめのシダや笹なども生えていました。虫もたくさんいました。まさに自然でした。将来、頂上の木の上から洞爺湖を見下ろすことができたら…と、ツリーハウスをつくる計画をお話ししてくれた髙橋さん。私の想像も膨らむのでした。
私たちは便利な生活に慣れ、石油や電気のない生活なんて考えられなくなっています。でも、限りある資源は大事に使いながら、頼りすぎないように、身近にある再生可能な資源や太陽や雨風なども上手に活用するのが本当に豊かな生活なのかもしれません。